労働者を雇う時の法律等について。
労働条件通知義務(労働基準法)
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないほか、賃金及び労働時間に関する事項その他の事項については、書面等により明示しなければならないとされています(労働基準法第15条第1項)。
また、明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができるとされています(同法第15条第2項)。
さらに、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならないとされています(法第15条第3項)。
明示しなければならない労働条件は以下の通りです(労働基準法施行規則第5条第1項各号)。
令和6年4月からは、有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合は当該上限の定めを明示しなければならないほか、就業場所、および従事すべき業務の変更の範囲についても明示しなければならないとされています。
絶対的必要記載事項(必ず明示が必要な事項) |
うち書面等による明示義務のある事項 |
一 |
労働契約の期間に関する事項 |
一の二 |
有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間(労働契約法第十八条第一項に規定する通算契約期間をいう。)又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む。) |
一の三 |
就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。) |
二 |
始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項 |
三 |
賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項(三号前段) |
四 |
退職に関する事項(解雇の事由を含む。) |
口頭による明示も可能な事項 |
(三) |
昇給に関する事項(三号後段) |
相対的必要記載事項(定めをしたときは明示が必要な事項) |
四の二 |
退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項 |
五 |
臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
※労働基準法施行規則第8条
法第二十四条第二項但書の規定による臨時に支払われる賃金、賞与に準ずるものは次に掲げるものとする。
一 一箇月を超える期間の出勤成績によつて支給される精勤手当
二 一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
三 一箇月を超える期間にわたる事由によつて算定される奨励加給又は能率手当
|
六 |
労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 |
七 |
安全及び衛生に関する事項 |
八 |
職業訓練に関する事項 |
九 |
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 |
十 |
表彰及び制裁に関する事項 |
十一 |
休職に関する事項 |
書面等により明示しなければならない事項についての明示方法は、以下の通りです。
原則として書面の交付によることが必要ですが、労働者が希望した場合は書面交付以外の方法によることができます(施行規則第5条第4項柱書、および各号)。
労働条件通知書の明示の方法 |
1 |
書面の交付 |
2 |
ファックスによる送信 |
3 |
電子メールその他の電気通信(電子メールのほか、SNS)の送信の方法(労働者が出力することにより書面を作成することができるものに限ります。) |
短時間・有期雇用労働者への労働条件明示義務(パートタイム・有期雇用労働者法)
事業主は、いわゆる正社員より週所定労働時間の短い、パートやアルバイト労働者や有期雇用契約の労働者を雇い入れたときは、労働基準法上の労働条件通知義務の内容に加え、一定の事項(特定事項)について、書面等で明示しなければならないとされています(パートタイム・有期雇用労働者法第6条第1項)。
また事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件に関する事項のうち特定事項及び労働基準法上の労働条件通知義務の内容以外のものについても、文書の交付等により明示するように努めるものとするとされています(法第6条第2項)。
特定事項の内容は以下の通りです(パートタイム・有期雇用労働者法施行規則第2条第1項)。
特定事項の内容 |
1 |
昇給の有無 |
2 |
退職手当の有無 |
3 |
賞与の有無 |
4 |
短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口 |
書面等により明示しなければならない事項についての明示方法は、以下の通りです。
原則として書面の交付によることが必要ですが、労働者が希望した場合は労働基準法上の労働条件通知義務と同様、書面交付以外の方法によることができます(法第6条第1項、施行規則第2条第4項)。
特定事項の明示の方法 |
1 |
書面の交付 |
2 |
ファックスによる送信 |
3 |
電子メールその他の電気通信(電子メールのほか、SNS)の送信の方法(労働者が出力することにより書面を作成することができるものに限ります。) |
不合理な待遇の禁止、差別的取り扱いの禁止(パートタイム・有期雇用労働法)
事業主は、その雇用するパート・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の職務の内容(業務の内容及び業務に伴う責任の程度)、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないとされています(パートタイム・有期雇用労働法第8条)。
この規定は、いわゆる同一労働同一賃金規定の一つで、職務の類似する通常の労働者との間に不合理な差異を設けることを禁止するものであり、合理的な差異は許すものとも考えられます。
この場合において、具体的にどの程度の差異であれば許されるかが問題となりますが、これまでに最高裁判決がいくつか出されているほか、厚生労働省からは同一労働同一賃金ガイドラインが発出されているほか、より分かりやすい参考資料も発出されていますので、これらを参考に考えていくことになります。
※職務の内容が同じか否かの判断ルーチン
※職務の内容・配置の変更の範囲(人材活用の仕組みや運用など)が同じか否かの判断ルーチン
資料出所:
パートタイム・有期雇用労働法のあらまし(厚生労働省)
また事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一のパート・有期雇用労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならないとされています(法第9条)。
この規定は、条文に記載されている2つの要件を満たすパートタイム・有期雇用労働者について、短時間・有期雇用であることを理由とする差別的な取り扱いを禁止するものであり、厚生労働省資料によると、例えば労働時間の差に基づく合理的な差異や勤務成績の差に基づく待遇の差異は認められるとされています。
健康診断(労働安全衛生法)
事業者は、労働者に対して、医師による健康診断を受けさせる義務があります(労働安全衛生法第66条1項)。
健康診断受診義務の内容は、雇入れ時健康診断、定期健康診断などがあります。
〇雇入れ時健康診断
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、医師による健康診断を行わなければならないとされています(労働安全衛生法施行規則第43条柱書)。
ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、その健康診断の項目に相当する項目については、健康診断を受けさせる必要はないとされています(同法施行規則第43条但し書)。
雇い入れ時の健康診断の項目は以下の通りです(同法施行規則第43条各号)。
雇入れ時健康診断項目 |
1 |
既往歴及び業務歴の調査 |
2 |
自覚症状及び他覚症状の有無の検査 |
3 |
身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 |
4 |
胸部エックス線検査 |
5 |
血圧の測定 |
6 |
貧血検査(血色素量及び赤血球数の検査) |
7 |
肝機能検査(GOT、GPT及びγ―GTPの検査) |
8 |
血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール及び血清トリグリセライドの量の検査) |
9 |
血糖検査 |
10 |
尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) |
11 |
心電図検査 |
健康診断を受けさせる対象となる「常時使用する労働者」は、無期雇用かつフルタイム勤務である「通常の労働者」のほか、一定の短時間労働者や有期雇用労働者も対象になります。
その基準が問題となりますが、行政通達によると、以下の条件を満たす労働者です。
常時使用する短時間労働者の判断基準 |
1 |
期間の定めのない契約により使用される者であること。
なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。
(なお、特定業務従事者健診の対象となる者の雇入時健康診断については、6カ月以上使用されることが予定され、又は更新により6カ月以上使用されている者) |
2 |
その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。 |
※上記2の基準に該当しない場合であっても、上記1の基準に該当し、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施するのが望ましいとされています。 |
資料出所:
Q16.一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?(東京労働局)
上記の基準は、パートタイム・有期雇用労働法に基づく短時間・有期雇用労働指針でも示されているとのことで、同法施行通達でも言及されています。
参考リンク:
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について(厚生労働省)
〇定期健康診断
事業者は、常時使用する労働者(特定業務の健康診断の対象者を除く)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、医師による健康診断を行わなければならないとされています(同法施行規則第44条第1項)。
健康診断項目は以下の通りです(同法施行規則第44条1項各号)。
定期健康診断項目 |
1 |
既往歴及び業務歴の調査 |
2 |
自覚症状及び他覚症状の有無の検査 |
3 |
身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 |
4 |
胸部エックス線検査及び喀痰検査 |
5 |
血圧の測定 |
6 |
貧血検査 |
7 |
肝機能検査 |
8 |
血中脂質検査 |
9 |
血糖検査 |
10 |
尿検査 |
11 |
心電図検査 |
このうち、一部の検診項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができるとされています(同法施行規則第44条第2項)。
省略できる検診項目とその基準は以下の通りです(平成10年6月24日 労働省告示第88号)。
省略できる項目 |
3 |
身 長 |
20歳以上の者 |
腹 囲 |
1 40歳未満の者(35歳の者を除く。)
2 妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された者
3 BMIが20未満である者
4 自ら腹囲を測定し、その値を申告した者
(BMIが22未満である者に限る。) |
4 |
胸部エックス線検査 |
40歳未満の者(20歳、25歳、30歳及び35歳の者を除く。)で、次のいずれにも該当しない者
1 感染症法施行令第12条第1項第1号に掲げる者
(学校、病院、診療所等で働き、感染症法第53条の2第1項に規定する、結核にかかる定期健康診断の対象者)
2 じん肺法第8条第1項第1号又は第3号に掲げる者
(常時粉塵作業従事者等で3年に1回のじん肺健康診断の対象者) |
喀痰検査 |
1 胸部エックス線検査によって病変の発見されない者
2 胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者
3 胸部エックス線検査の項の下欄に掲げる者
(胸部エックス線検査の省略対象者) |
6 |
貧血検査 |
40歳未満の者(35歳の者を除く。) |
7 |
肝機能検査 |
8 |
血中脂質検査 |
9 |
血糖検査 |
11 |
心電図検査 |
定期健康診断は、雇入れ時健康診断(雇入れ時健康診断に代わる書面を提出した者を含む。)、海外派遣労働者の健康診断(同法施行規則第45条の2)、有害業務従事者に対する特殊健康診断(同法第66条第2項)を受けた者については、当該健康診断の実施の日から1年間に限り、当該健康診断の項目に相当する項目を省略して行うことができるとされています(同法施行規則第44条第3項)。
〇特定業務従事者の健康診断
第四十五条 事業者は、特定業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに一回、定期に、医師による健康診断を行わなければならないとされています(同法施行規則第45条第1項)。
診断項目は定期健康診断と同じですが、配置替えの際、および6か月以内ごとに一回の健康診断が必要とされていますが、エックス線検査及び喀痰検査については、1年以内ごとに一回、定期に行えば足りるとされています(同条第1項)。
定期健康診断と同様に、一部の項目を省略することもできるとされており(同法施行規則第45条第3項、第44条第2項、第3項)、省略できる項目は定期健康診断と同様であるほか、雇入れ時健康診断(雇入れ時健康診断に代わる書面を提出した者を含む。)、海外派遣労働者の健康診断(同法施行規則第45条の2)、有害業務従事者に対する特殊健康診断(同法第66条第2項)を受けた者については、当該健康診断の実施の日から6か月間に限り、当該健康診断の項目に相当する項目を省略して行うことができるとされています(同法施行規則第第45条第2項、第44条第3項)。
また、前回の健康診断においてその項目について健康診断を受けた場合、医師が必要でないと認めるときは、一部の項目の全部または一部を省略して行うことができるとされています(同条第3項)。
省略できる項目は以下の通りです。
前回健康診断で検査した場合に省略できる項目 |
6 |
貧血検査 |
7 |
肝機能検査 |
8 |
血中脂質検査 |
9 |
血糖検査 |
11 |
心電図検査 |
特定業務健康診断の対象となる特定業務は以下の通りとされています(同法施行規則第13条第1項第3号)。
特定業務 |
イ |
多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務 |
ロ |
多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務 |
ハ |
ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務 |
ニ |
土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務 |
ホ |
異常気圧下における業務 |
へ |
さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務 |
ト |
重量物の取扱い等重激な業務 |
チ |
ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務 |
リ |
坑内における業務 |
ヌ |
深夜業を含む業務 |
ル |
水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務 |
ヲ |
鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務 |
ワ |
病原体によつて汚染のおそれが著しい業務 |
カ |
その他厚生労働大臣が定める業務 |
〇有害業務従事者に対する特殊健康診断
事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者及び、有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用している者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならないとされています(法第66条第2項)。
特殊健康診断の対象者と健康診断の内容 |
屋内作業場等(第三種有機溶剤等にあっては、タンク等の内部に限る)における有機溶剤業務に常時従事する労働者 (有機溶剤中毒予防規則第29条) |
検診時期 |
雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回 |
検診項目 |
・業務の経歴の調査
・作業条件の簡易な調査
・有機溶剤による健康障害の既往歴並びに自覚症状及び他覚症状の既往歴の有無の検査、別表の下欄に掲げる項目(尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査に限る。)についての既往の検査結果の調査並びに別表の下欄(尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査を除く。)及び第五項第二号から第五号までに掲げる項目についての既往の異常所見の有無の調査
・有機溶剤による自覚症状又は他覚症状と通常認められる症状の有無の検査
※別表下欄に掲げる項目・・・有機溶剤の種類に応じて検査項目を規定しています。
※第5項第2号から第5号に掲げる項目
・貧血検査
・肝機能検査
・腎機能検査
・神経学的検査
※前回検診項目の省略規定(同条第4項)、検診項目の追加規定(同条第5項)、検診結果の有機溶剤等健康診断個人票作成及び5年間の保存義務(同規則第30条)、検診結果報告義務(同規則第30条の3)、多量吸引時等の緊急診断(同規則第30条の4)、優良事業所に対する健康診断の特例(同規則第31条)などが規定されています。
有機溶剤中毒予防規則(e-GOV) |
鉛業務に常時従事する労働者 (鉛中毒予防規則第53条) |
検診時期 |
雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回 |
検診項目 |
・業務の経歴の調査
・作業条件の簡易な調査
・鉛による自覚症状及び他覚症状の既往歴の有無の検査並びに第五号及び第六号に掲げる項目についての既往の検査結果の調査
・鉛による自覚症状又は他覚症状と通常認められる症状の有無の検査
・血液中の鉛の量の検査
・尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査
※前回検診項目の省略規定(同条第2項)、検診項目の追加規定(同条第3項)、検診結果の鉛健康診断個人票作成、及び5年間保存義務(同規則第54条)、検診結果報告義務(同規則第55条)、有症状従事者等に対する診断(同規則第56条)等が規定されています。
鉛中毒予防規則(e-GOV) |
四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者 (四アルキル鉛則第22条) |
検診時期 |
雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回 |
検診項目 |
・業務の経歴の調査
・作業条件の簡易な調査
・四アルキル鉛による自覚症状及び他覚症状の既往歴の有無の検査並びに第五号及び第六号に掲げる項目についての既往の検査結果の調査
・いらいら、不眠、悪夢、食欲不振、顔面蒼白、倦怠感、盗汗、頭痛、振顫、四肢の腱反射亢進、悪心、嘔吐、腹痛、不安、興奮、記憶障害その他の神経症状又は精神症状の自覚症状又は他覚症状の有無の検査
・血液中の鉛の量の検査
・尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査
※前回検診項目の省略規定(同条第2項)、検診項目の追加規定(同条第3項)、検診結果の四アルキル鉛健康診断個人票作成、及び5年間保存義務(同規則第23条)、検診結果報告義務(同規則第24条)、吸入・暴露等労働者及び有症状従事者等に対する診断(同規則第25条)等が規定されています。
四アルキル鉛中毒予防規則(e-GOV) |
特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る) (特化則第39条) |
検診時期 |
別表第三の上欄に掲げる業務の区分に応じ、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後同表の中欄に掲げる期間以内ごとに一回 |
検診項目 |
・業務の経歴の調査、作業条件の簡易な調査(当該業務に常時従事する労働者に対して行う健康診断におけるものに限る。)の他、化学物質の種類に応じて特化則別表第3に規定
※検診結果の特定化学物質健康診断個人票作成、及び5年間保存義務(同規則第40条第1項)、検診結果報告義務(同規則第41条)、特定化学物質汚染・吸入時の緊急診断(同規則第42条)等が規定されています。
特定化学物質障害予防規則(e-GOV)
化学物質取扱業務従事者に係る特殊健康診断の項目を見直しました(厚生労働省) |
対象物質 |
特化則第39条第1項(抜粋)
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令第二十二条第一項第三号の業務(石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等(石綿則第二条第四項に規定する石綿分析用試料等をいう。)の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務及び別表第一第三十七号に掲げる物を製造し、又は取り扱う業務を除く。)に常時従事する労働者
|
労働安全衛生法施行令第22条第1項第3号(抜粋)
|
別表第三第一号若しくは第二号に掲げる特定化学物質(同号5及び31の2に掲げる物並びに同号37に掲げる物で同号5又は31の2に係るものを除く。)を製造し、若しくは取り扱う業務(同号8若しくは32に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号8若しくは32に係るものを製造する事業場以外の事業場においてこれらの物を取り扱う業務及び同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に係るものを製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを除く。)、第十六条第一項各号に掲げる物(同項第四号に掲げる物及び同項第九号に掲げる物で同項第四号に係るものを除く。)を試験研究のため製造し、若しくは使用する業務又は石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造若しくは石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務
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労働安全衛生法施行令第16条第1項各号(抜粋)
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一 黄りんマツチ
二 ベンジジン及びその塩
三 四―アミノジフエニル及びその塩
五 四―ニトロジフエニル及びその塩
六 ビス(クロロメチル)エーテル
七 ベータ―ナフチルアミン及びその塩
八 ベンゼンを含有するゴムのりで、その含有するベンゼンの容量が当該ゴムのりの溶剤(希釈剤を含む。)の五パーセントを超えるもの
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労働安全衛生法施行令別表第三(抜粋)
|
一 第一類物質 |
|
|
1 ジクロルベンジジン及びその塩
2 アルフア―ナフチルアミン及びその塩
3 塩素化ビフエニル(別名PCB)
4 オルト―トリジン及びその塩
5 ジアニシジン及びその塩
6 ベリリウム及びその化合物
7 ベンゾトリクロリド
8 1から6までに掲げる物をその重量の一パーセントを超えて含有し、又は7に掲げる物をその重量の〇・五パーセントを超えて含有する製剤その他の物(合金にあつては、ベリリウムをその重量の三パーセントを超えて含有するものに限る。) |
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二 第二類物質 |
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1 アクリルアミド
2 アクリロニトリル
3 アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基又はエチル基である物に限る。)
3の2 インジウム化合物
3の3 エチルベンゼン
4 エチレンイミン
6 塩化ビニル
7 塩素
8 オーラミン
8の2 オルト―トルイジン
9 オルト―フタロジニトリル
10 カドミウム及びその化合物
11 クロム酸及びその塩
11の2 クロロホルム
12 クロロメチルメチルエーテル
13 五酸化バナジウム
13の2 コバルト及びその無機化合物
14 コールタール
15 酸化プロピレン
15の2 三酸化二アンチモン
16 シアン化カリウム
17 シアン化水素
18 シアン化ナトリウム
18の2 四塩化炭素
18の3 一・四―ジオキサン
18の4 一・二―ジクロロエタン(別名二塩化エチレン)
19 三・三′―ジクロロ―四・四′―ジアミノジフエニルメタン
19の2 一・二―ジクロロプロパン
19の3 ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)
19の4 ジメチル―二・二―ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)
19の5 一・一―ジメチルヒドラジン
20 臭化メチル
21 重クロム酸及びその塩
22 水銀及びその無機化合物(硫化水銀を除く。)
22の2 スチレン
22の3 一・一・二・二―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)
22の4 テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)
22の5 トリクロロエチレン
23 トリレンジイソシアネート
23の2 ナフタレン
23の3 ニツケル化合物(24に掲げる物を除き、粉状の物に限る。)
24 ニツケルカルボニル
25 ニトログリコール
26 パラ―ジメチルアミノアゾベンゼン
27 パラ―ニトロクロルベンゼン
27の2 砒素及びその化合物(アルシン及び砒化ガリウムを除く。)
28 弗化水素
29 ベータ―プロピオラクトン
30 ベンゼン
31 ペンタクロルフエノール(別名PCP)及びそのナトリウム塩
32 マゼンタ
33 マンガン及びその化合物
33の2 メチルイソブチルケトン
34 沃化メチル
34の2 溶接ヒューム
34の3 リフラクトリーセラミックファイバー
35 硫化水素
36 硫酸ジメチル
37 1から36までに掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの
|
|
高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者 (高圧則第38条) |
検診時期 |
雇入れの際、当該業務への配置替えの際及び当該業務についた後六月以内ごとに一回 |
検診項目 |
・既往歴及び高気圧業務歴の調査
・関節、腰若しくは下肢の痛み、耳鳴り等の自覚症状又は他覚症状の有無の検査
・四肢の運動機能の検査
・鼓膜及び聴力の検査
・血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋白の有無の検査
・肺活量の測定
※検診項目の追加規定(同条第2項)、検診結果の高気圧業務健康診断個人票作成、及び5年間保存義務(同規則第39条)、等が規定されています。
高気圧作業安全衛生規則(e-GOV) |
放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者 (電離則第56条) |
検診時期 |
雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回 |
検診項目 |
・被ばく歴の有無(被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容及び期間、放射線障害の有無、自覚症状の有無その他放射線による被ばくに関する事項)の調査及びその評価
・白血球数及び白血球百分率の検査
・赤血球数の検査及び血色素量又はヘマトクリット値の検査
・白内障に関する眼の検査
・皮膚の検査
※検診項目の省略規定(同条第2項~第4項)、放射線量推定資料の医師への提出義務(同条第5項)、緊急作業者にかかる検診実施規定(同規則第56条の2)、検診結果の電離放射線健康診断個人票作成、及び30年間保存義務(同規則第57条)、検診結果報告義務(同規則第59条)等が規定されています。
電離放射線障害防止規則(e-GOV) |
除染等業務に常時従事する除染等業務従事者 (除染則第20条) |
検診時期 |
雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回 |
検診項目 |
・被ばく歴の有無(被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容及び期間、放射線障害の有無、自覚症状の有無その他放射線による被ばくに関する事項)の調査及びその評価
・白血球数及び白血球百分率の検査
・赤血球数の検査及び血色素量又はヘマトクリット値の検査
・白内障に関する眼の検査
・皮膚の検査
※検診項目の省略規定(同条第2項)、検診結果の除染等電離放射線健康診断個人票作成、及び30年間保存義務(同規則第21条)、検診結果報告義務(同規則第24条)等が規定されています。
東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則(e-GOV) |
石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍労働者 (石綿則第40条) |
検診時期 |
雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回 |
検診項目 |
・業務の経歴の調査
・石綿によるせき、たん、息切れ、胸痛等の他覚症状又は自覚症状の既往歴の有無の検査
・せき、たん、息切れ、胸痛等の他覚症状又は自覚症状の有無の検査
・胸部のエックス線直接撮影による検査
※異常の疑いがある者で、医師が必要と認める者に対する健康診断項目(同条第3項)
・作業条件の調査
・胸部のエックス線直接撮影による検査の結果、異常な陰影(石綿肺による線維増殖性の変化によるものを除く。)がある場合で、医師が必要と認めるときは、特殊なエックス線撮影による検査、喀痰の細胞診又は気管支鏡検査
※検診結果の石綿健康診断個人票作成、及び40年間保存義務(同規則第41条)、検診結果報告義務(同規則第43条)等が規定されています。
石綿障害予防規則(e-GOV) |
※参考資料
労働安全衛生規則の一部を改正する省令、有機溶剤中毒予防規則の一部を改正する省令及び鉛中毒予防規則の一部を改正する省令等の施行について(厚生労働省、平成元年8月22日 基発第462号通達)
〇給食従業員の検便
事業者は、事業に付属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者に対し、その雇入れの際または当該業務への配置替えの際、検便による健康診断を行なわなければならないとされています(同法施行規則第47条 )。
これは、細菌による食中毒を未然に防ぐため、腹痛や下痢などの症状がでていない、健康保菌者の検索を目的として行うものです。
〇歯科医師による健康診断
事業者は、一定の業務(同法施行令第22条第3項に定める業務)に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際、当該業務への配置替えの際及び当該業務についた後六月以内ごとに一回、定期に、歯科医師による健康診断を行なわなければならないとされています(同法第66条第3項、同法施行規則第48条、同法施行令第22条第3項)。
これは、歯や支持組織に有害な物質を取り扱う労働者に対し、身体への影響を歯科の観点から調べるもので、検診項目は法定されていませんが、歯牙酸蝕症の発生の有無などを調査するものとされています。
また、一般の定期健康診断の場合は労働者数50人未満の事業場については所轄労働基準監督署への報告義務はありませんが、令和4年(2022年)10月以降、歯科健康診断については労働者数にかかわらず、健康診断を行ったすべての事業場に所轄労働基準監督署への報告義務があります。
※参考資料
労働安全衛生法に基づく歯科医師による健康診断を実施しましょう(厚生労働省)
労働安全衛生法に基づく歯科特殊健康診断をご存知ですか?(広島県歯科医師会)
有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書様式(厚生労働省)
歯科医師による健康診断の対象者と健康診断の内容 |
対象者 |
労働安全衛生法施行令第22条第3項の業務に常時従事する労働者 |
検診時期 |
雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回 |
対象業務
及び
対象物質 |
労働安全衛生法施行令第22条第1項第3号(抜粋)
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別表第三第一号若しくは第二号に掲げる特定化学物質(同号5及び31の2に掲げる物並びに同号37に掲げる物で同号5又は31の2に係るものを除く。)を製造し、若しくは取り扱う業務(同号8若しくは32に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号8若しくは32に係るものを製造する事業場以外の事業場においてこれらの物を取り扱う業務及び同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に係るものを製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを除く。)、第十六条第一項各号に掲げる物(同項第四号に掲げる物及び同項第九号に掲げる物で同項第四号に係るものを除く。)を試験研究のため製造し、若しくは使用する業務又は石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造若しくは石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務
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労働安全衛生法施行令第16条第1項各号(抜粋)
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一 黄りんマツチ
二 ベンジジン及びその塩
三 四―アミノジフエニル及びその塩
五 四―ニトロジフエニル及びその塩
六 ビス(クロロメチル)エーテル
七 ベータ―ナフチルアミン及びその塩
八 ベンゼンを含有するゴムのりで、その含有するベンゼンの容量が当該ゴムのりの溶剤(希釈剤を含む。)の五パーセントを超えるもの
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労働安全衛生法施行令別表第三(抜粋)
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一 第一類物質 |
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1 ジクロルベンジジン及びその塩
2 アルフア―ナフチルアミン及びその塩
3 塩素化ビフエニル(別名PCB)
4 オルト―トリジン及びその塩
5 ジアニシジン及びその塩
6 ベリリウム及びその化合物
7 ベンゾトリクロリド
8 1から6までに掲げる物をその重量の一パーセントを超えて含有し、又は7に掲げる物をその重量の〇・五パーセントを超えて含有する製剤その他の物(合金にあつては、ベリリウムをその重量の三パーセントを超えて含有するものに限る。) |
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二 第二類物質 |
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1 アクリルアミド
2 アクリロニトリル
3 アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基又はエチル基である物に限る。)
3の2 インジウム化合物
3の3 エチルベンゼン
4 エチレンイミン
6 塩化ビニル
7 塩素
8 オーラミン
8の2 オルト―トルイジン
9 オルト―フタロジニトリル
10 カドミウム及びその化合物
11 クロム酸及びその塩
11の2 クロロホルム
12 クロロメチルメチルエーテル
13 五酸化バナジウム
13の2 コバルト及びその無機化合物
14 コールタール
15 酸化プロピレン
15の2 三酸化二アンチモン
16 シアン化カリウム
17 シアン化水素
18 シアン化ナトリウム
18の2 四塩化炭素
18の3 一・四―ジオキサン
18の4 一・二―ジクロロエタン(別名二塩化エチレン)
19 三・三′―ジクロロ―四・四′―ジアミノジフエニルメタン
19の2 一・二―ジクロロプロパン
19の3 ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)
19の4 ジメチル―二・二―ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)
19の5 一・一―ジメチルヒドラジン
20 臭化メチル
21 重クロム酸及びその塩
22 水銀及びその無機化合物(硫化水銀を除く。)
22の2 スチレン
22の3 一・一・二・二―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)
22の4 テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)
22の5 トリクロロエチレン
23 トリレンジイソシアネート
23の2 ナフタレン
23の3 ニツケル化合物(24に掲げる物を除き、粉状の物に限る。)
24 ニツケルカルボニル
25 ニトログリコール
26 パラ―ジメチルアミノアゾベンゼン
27 パラ―ニトロクロルベンゼン
27の2 砒素及びその化合物(アルシン及び砒化ガリウムを除く。)
28 弗化水素
29 ベータ―プロピオラクトン
30 ベンゼン
31 ペンタクロルフエノール(別名PCP)及びそのナトリウム塩
32 マゼンタ
33 マンガン及びその化合物
33の2 メチルイソブチルケトン
34 沃化メチル
34の2 溶接ヒューム
34の3 リフラクトリーセラミックファイバー
35 硫化水素
36 硫酸ジメチル
37 1から36までに掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの
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〇海外派遣労働者の健康診断
事業者は、労働者を本邦外の地域に六月以上派遣しようとするとき、及び本邦外の地域に六月以上派遣した労働者を本邦の地域内における業務に就かせるとき(一時的に就かせるときを除く。)は、あらかじめ、当該労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならないとされています。(法施行規則第45条の2第1項、同条第2項)
健診項目は、一般健康診断の項目に加え、厚生労働大臣が定める項目のうち医師が必要であると認める項目とされており、厚生労働大臣が定める項目については大臣告示がされています。
海外派遣前の健康診断については、雇入れ時健康診断(同法施行規則第43条)、定期健康診断(同第44条)、特定業務従事者の健康診断(同第45条)、有害業務従事者の特殊健康診断(同法第66条第2項)を受けた者については、当該健康診断の実施の日から六月間に限り、その者が受けた当該健康診断の項目に相当する項目を省略して行うことができるとされています。(同法施行規則第45条の2第3項)
また、健診項目は定期健康診断と同様、医師が必要でないと認めた項目について省略できるとされています。(同法施行規則第45条の2第4項)
※大臣告示(労働安全衛生規則第四十五条の二第一項及び第二項の規定に基づく厚生労働大臣が定める項目を定める告示)による付加健診項目
海外派遣時 |
検診項目 |
・腹部画像検査
・血液中の尿酸の量の検査
・B型肝炎ウイルス抗体検査
・ABO式及びRh式の血液型検査 |
海外派遣からの帰還時 |
検診項目 |
・腹部画像検査
・血液中の尿酸の量の検査
・B型肝炎ウイルス抗体検査
・糞便塗抹検査 |
社会保険への加入義務(厚生年金保険法、健康保険法)
社会保険の適用事業所は、一定の労働者を社会保険に加入させる義務があります。平成28年10月から、社会保険が適用される労働者の範囲が拡大されているほか、令和4年10月、および令和6年10月からは、さらに労働者の範囲が拡大されます。
〇厚生年金保険、健康保険の適用事業所について
厚生年金保険、健康保険の適用事業所は以下の通りです。(健康保険法第3条第3項、厚生年金保険法第6条)
個人事業の場合、下表一の業種で常時5人以上の労働者を使用する場合に適用事業所となり、国や地方公共団体、法人の事業所は規模にかかわらず適用事業所となります。
それ以外の事業所も、被保険者となるべき者の1/2以上の同意を得て厚生労働大臣に申請することで適用事業所となることができます。(健康保険法第31条、厚生年金保険法第6条第3項他)
適用事業所 |
一 |
次に掲げる事業の事業所であって、常時五人以上の従業員を使用するもの |
イ |
物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業 |
ロ |
土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業 |
ハ |
鉱物の採掘又は採取の事業 |
ニ |
電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業 |
ホ |
貨物又は旅客の運送の事業 |
ヘ |
貨物積卸しの事業 |
ト |
焼却、清掃又はと殺の事業 |
チ |
物の販売又は配給の事業 |
リ |
金融又は保険の事業 |
ヌ |
物の保管又は賃貸の事業 |
ル |
媒介周旋の事業 |
ヲ |
集金、案内又は広告の事業 |
ワ |
教育、研究又は調査の事業 |
カ |
疾病の治療、助産その他医療の事業 |
ヨ |
通信又は報道の事業 |
タ |
社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める社会福祉事業及び更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)に定める更生保護事業 |
レ |
弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業 |
二 |
前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの |
〇厚生年金保険、健康保険の被保険者について
厚生年金保険、健康保険の被保険者は以下の通りです。(健康保険法第3条第1項、厚生年金保険法第9条他)
1.健康保険の被保険者
(1)健康保険の被保険者
適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいうとされていますが、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができないとされています。(健康保険法第3条第1項)
一 |
船員保険の被保険者(船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第二条第二項に規定する疾病任意継続被保険者を除く。) |
二 |
臨時に使用される者であって、次に掲げるもの(イに掲げる者にあっては一月を超え、ロに掲げる者にあってはロに掲げる定めた期間を超え、引き続き使用されるに至った場合を除く。) |
イ |
日々雇い入れられる者 |
ロ |
二月以内の期間を定めて使用される者であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの |
三 |
事業所又は事務所(第八十八条第一項及び第八十九条第一項を除き、以下単に「事業所」という。)で所在地が一定しないものに使用される者 |
四 |
季節的業務に使用される者(継続して四月を超えて使用されるべき場合を除く。) |
五 |
臨時的事業の事業所に使用される者(継続して六月を超えて使用されるべき場合を除く。) |
六 |
国民健康保険組合の事業所に使用される者 |
七 |
後期高齢者医療の被保険者(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第五十条の規定による被保険者をいう。)及び同条各号のいずれかに該当する者で同法第五十一条の規定により後期高齢者医療の被保険者とならないもの(以下「後期高齢者医療の被保険者等」という。) |
八 |
厚生労働大臣、健康保険組合又は共済組合の承認を受けた者(健康保険の被保険者でないことにより国民健康保険の被保険者であるべき期間に限る。) |
九 |
事業所に使用される者であって、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者(当該事業所に使用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に使用される者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該者と同種の業務に従事する当該通常の労働者。以下この号において単に「通常の労働者」という。)の一週間の所定労働時間の四分の三未満である短時間労働者(一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い者をいう。以下この号において同じ。)又はその一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の四分の三未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからハまでのいずれかの要件に該当するもの |
イ |
一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。 |
ロ |
報酬(最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第四条第三項各号に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除く。)について、厚生労働省令で定めるところにより、第四十二条第一項の規定の例により算定した額が、八万八千円未満であること。 |
ハ |
学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十条に規定する高等学校の生徒、同法第八十三条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること。 |
(2)日雇特例被保険者
「日雇特例被保険者」とは、適用事業所に使用される日雇労働者をいうとされていますが、後期高齢者医療の被保険者等である者または次の各号のいずれかに該当する者として厚生労働大臣の承認を受けたものは、この限りでないとされています。(健康保険法第3条第2項)
一 |
適用事業所において、引き続く二月間に通算して二十六日以上使用される見込みのないことが明らかであるとき。 |
二 |
任意継続被保険者であるとき。 |
三 |
その他特別の理由があるとき。 |
2.厚生年金保険の被保険者
(1)被保険者
厚生年金保険の被保険者となるのは以下の者とされています。
(ⅰ) |
適用事業所に使用される七十歳未満の者(厚生年金保険法第9条) |
(ⅱ) |
適用事業所以外の事業所に使用される七十歳未満の者で、その事業所の事業主の同意を得た上で厚生労働大臣の認可を受けた者(同法第10条) |
(2)適用除外となる者
次の各号のいずれかに該当する者は、厚生年金保険の被保険者としないとされています。(同法第12条)
一 |
臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であつて、次に掲げるもの。ただし、イに掲げる者にあつては一月を超え、ロに掲げる者にあつては定めた期間を超え、引き続き使用されるに至つた場合を除く。 |
イ |
日々雇い入れられる者 |
ロ |
二月以内の期間を定めて使用される者であつて、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの |
二 |
所在地が一定しない事業所に使用される者 |
三 |
季節的業務に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)。ただし、継続して四月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。 |
四 |
臨時的事業の事業所に使用される者。ただし、継続して六月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。 |
五 |
事業所に使用される者であつて、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者(当該事業所に使用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に使用される者にあつては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該者と同種の業務に従事する当該通常の労働者。以下この号において単に「通常の労働者」という。)の一週間の所定労働時間の四分の三未満である短時間労働者(一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い者をいう。以下この号において同じ。)又はその一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の四分の三未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからハまでのいずれかの要件に該当するもの |
イ |
一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。 |
ロ |
報酬(最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第四条第三項各号に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除く。)について、厚生労働省令で定めるところにより、第二十二条第一項の規定の例により算定した額が、八万八千円未満であること。 |
ハ |
学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十条に規定する高等学校の生徒、同法第八十三条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること。 |
3.短時間労働者への厚生年金保険・健康保険の適用
(1)適用事業所で働く短時間労働者への適用
社会保険が適用される事業所で働く短時間労働者については、一定の短時間労働者が社会保険の適用対象となります。
一週間の所定労働時間が通常の労働者(いわゆるフルタイム正社員等)の一週間の所定労働時間の4分の3未満である短時間労働者は適用除外とされます。(健康保険法第3条第1項第9号、厚生年金保険法第12条第5号)
(2)特定適用事業所で働く短時間労働者への適用
ただし、一定の規模の事業所(特定適用事業所)に雇用される短時間労働者のうち、以下の要件を満たす短時間労働者は被保険者となります。(厚生年金保険法第12条第5号、平成24年8月22日法附則第17条、健康保険法第3条第1項第9号、平成24年8月22日法附則第46条)
イ |
一週間の所定労働時間が20時間以上であること。 |
ロ |
月報酬額が、8万8千円以上であること。 |
ハ |
2月以内の期間を定めて使用される者であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないものでないこと。 |
ニ |
高等学校の生徒、大学の学生等でないこと。 |
特定適用事業所とは、事業主が同一である一又は二以上の適用事業所であって、当該一又は二以上の適用事業所に使用される特定労働者(七十歳未満の者のうち、特定四分の三未満短時間労働者以外のものをいう。)の総数が一定以上である事業所を言います。(厚生年金保険法平成24年8月22日法附則第17条第12項、健康保険法平成24年8月22日法附則第46条第12項)
特定適用事業所の規模については、以下のように定められ、短時間労働者への適用が段階的に拡大されています。(公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律附則第17条、年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律第9条、第10条)
年月 |
特定労働者の総数 |
平成28年10月~ |
常時500人を超えるもの |
令和4年10月~ |
常時100人を超えるもの |
令和6年10月~ |
常時50人を超えるもの |
(3)任意特定適用事業所で働く短時間労働者への適用
特定適用事業所に該当しない事業所においても、被保険者及び七十歳以上の使用される者(以下「四分の三以上同意対象者」という。)の四分の三以上で組織する労働組合があるときは当該労働組合の同意、ない時は当該事業主の一又は二以上の適用事業所に使用される四分の三以上同意対象者の四分の三以上を代表する者の同意を得て、厚生労働大臣に特定適用事業所としての適用を受ける旨の申出を行ったときは、任意特定適用事業所として、(2)に示した条件を満たす短時間労働者も社会保険の適用を受けることになります。(厚生年金保険法平成24年8月22日法附則第17条第2項、健康保険法平成24年8月22日法附則第46条第2項)
4.被扶養者等に関する手続き
(1)健康保険の被扶養者
健康保険の被扶養者は、以下のように規定されています。(健康保険法第3条第7項)
次に掲げる者で、日本国内に住所を有するもの又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められるものとして厚生労働省令で定めるものをいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者は、この限りでない。
一 |
被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。以下この項において同じ。)の直系尊属、配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この項において同じ。)、子、孫及び兄弟姉妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの |
二 |
被保険者の三親等内の親族で前号に掲げる者以外のものであって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの |
三 |
被保険者の配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの父母及び子であって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの |
四 |
前号の配偶者の死亡後におけるその父母及び子であって、引き続きその被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの |
※「主としてその被保険者により生計を維持するもの」の要件は、以下のように規定されています。(通達:収入がある者についての被扶養者の認定について(昭和五二年四月六日)(保発第九号・庁保発第九号))
1 |
被扶養者としての届出に係る者(以下「認定対象者」という。)が被保険者と同一世帯に属している場合 |
|
(1) |
認定対象者の年間収入が一三〇万円未満(認定対象者が六〇歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては一八〇万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の二分の一未満である場合は、原則として被扶養者に該当するものとすること。
|
|
(2) |
前記(1)の条件に該当しない場合であっても、当該認定対象者の年間収入が一三〇万円未満(認定対象者が六〇歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては一八〇万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上廻らない場合には、当該世帯の生計の状況を総合的に勘案して、当該被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、被扶養者に該当するものとして差し支えないこと。
|
2 |
認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合 |
|
認定対象者の年間収入が、一三〇万円未満(認定対象者が六〇歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては一八〇万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助に依る収入額より少ない場合には、原則として被扶養者に該当するものとすること。 |
3 |
前記1及び2により被扶養者の認定を行うことが実態と著しくかけ離れたものとなり、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなると認められる場合には、その具体的事情に照らし最も妥当と認められる認定を行うものとすること。 |
4 |
前記取扱いによる被扶養者の認定は、今後の被扶養者の認定について行うものとすること。 |
5 |
被扶養者の認定をめぐって、関係者間に問題が生じている場合には、被保険者又は関係保険者の申し立てにより、被保険者の勤務する事業所の所在地の都道府県保険課長が関係者の意見を聴き適宜必要な指導を行うものとすること。 |
6 |
この取扱いは、健康保険法に基づく被扶養者の認定について行うものであるが、この他に船員保険法第一条第三項各号に規定する被扶養者の認定についてもこれに準じて取り扱うものとすること。 |
|
(2)国民年金第3号被保険者
国民年金第3号被保険者とは、国民年金第2号被保険者の配偶者(日本国内に住所を有する者又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者として厚生労働省令で定める者に限る。)であつて主として第二号被保険者の収入により生計を維持するもの(第二号被保険者である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者を除く。以下「被扶養配偶者」という。)のうち二十歳以上六十歳未満のものとされています。(国民年金法第7条第1項第3号)
ここで、国民年金第2号被保険者とは、厚生年金保険の被保険者のことをいいます。
なお、「日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者として厚生労働省令で定める者」は、以下のように定められています。(国民年金法施行規則第1条の3)
一 |
外国において留学をする学生 |
ニ |
外国に赴任する第二号被保険者(法第七条第一項第二号に規定する第二号被保険者をいう。以下同じ。)に同行する者 |
三 |
観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者 |
四 |
第二号被保険者が外国に赴任している間に当該第二号被保険者との身分関係が生じた者であつて、第二号に掲げる者と同等と認められるもの |
五 |
前各号に掲げる者のほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者 |
(3)被扶養者等についての届出
それぞれ、以下の届出を行うことになります。
健康保険 |
健康保険 被扶養者(異動)届 |
厚生年金保険 |
国民年金第3号被保険者該当届 |
(出所:
就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き(日本年金機構))
労働保険への加入義務(労災保険法)
一定の農林水産業の事業者を除くすべての事業者は、労災保険に加入する義務があります。
労災保険は、すべての労働者に適用されます。
1.労災保険が適用される事業
労災保険が適用される事業は、労働者を使用する事業とされています。(労働者災害補償保険法第3条第1項)
なお、国の直営事業及び官公署の事業(労働基準法別表第一に掲げる事業を除く。)については、労災保険は適用除外とされているほか、農林水産業のうち、一定の事業は暫定任意適用事業として、労災保険が強制適用とはならないこととされています。(労働者災害補償保険法第3条第2項、附則第12条他)
2.暫定任意適用事業
労災保険が強制適用とならない事業は、以下の事業とされています。(労働者災害補償保険法昭和44年附則第12条、失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令第17条、船員法第1条、昭和五十年四月一日労働省告示第三十五号)
労災保険暫定任意適用事業となる事業 |
(労働者災害補償保険法昭和44年附則第12条)
次に掲げる事業以外の事業であつて、政令で定めるものは、当分の間、第二条の規定による改正後の労働者災害補償保険法第三条第一項の適用事業としない。
一 |
第二条の規定による改正前の労働者災害補償保険法第三条第一項に規定する事業 |
二 |
労働者災害補償保険法第三十五条第一項第三号の規定の適用を受ける者のうち同法第三十三条第三号又は第五号に掲げる者が行う当該事業又は当該作業に係る事業(その者が同法第三十五条第一項第三号の規定の適用を受けなくなつた後引き続き労働者を使用して行う事業を含む。)であつて、農業(畜産及び養蚕の事業を含む。)に該当するもの |
(失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(昭和四十七年三月三十一日 政令第四十七号)第17条)
失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律附則第十二条第一項の政令で定める事業は、次の各号に掲げる事業(都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業、法人である事業主の事業、船員法第一条に規定する船員を使用して行う船舶所有者(船員保険法第三条に規定する場合にあつては、同条の規定により船舶所有者とされる者)の事業及び労働者災害補償保険法第七条第一項第一号に規定する業務災害の発生のおそれが多いものとして厚生労働大臣が定める事業を除く。)のうち、常時五人以上の労働者を使用する事業以外の事業
一 |
土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業 |
二 |
動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他畜産、養蚕又は水産の事業 |
|
労災保険暫定任意適用事業から除外される事業 |
船員法による除外 |
(船員法第1条)
この法律において「船員」とは、日本船舶又は日本船舶以外の国土交通省令で定める船舶に乗り組む船長及び海員並びに予備船員をいう。
2 前項に規定する船舶には、次の船舶を含まない。
一 総トン数五トン未満の船舶
二 湖、川又は港のみを航行する船舶
三 政令の定める総トン数三十トン未満の漁船
(船員法第一条第二項第三号の漁船の範囲を定める政令)
船員法第一条第二項第三号の政令の定める総トン数三十トン未満の漁船は、次の漁船とする。
一 推進機関を備える総トン数三十トン未満の漁船であつて、専ら次に掲げる漁業に従事するもの
イ 漁具を定置して営む漁業
ロ 漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第六十条第四項の区画漁業又は同条第五項の共同漁業
二 推進機関を備える総トン数二十トン未満の漁船(前号に掲げる漁船を除く。)であつて、その従事する漁業の種類及び操業海域その他の要件からみて船員労働の特殊性が認められないものとして国土交通省令で定めるもの
三 推進機関を備えない総トン数三十トン未満の漁船(他の漁船の附属漁船にあつては、前号に掲げる漁船の附属漁船に限る。)
|
厚生労働省令による除外 |
(失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令第十七条の規定に基づく厚生労働大臣が定める事業(昭和五十年四月一日 労働省告示第三十五号))
失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(昭和四十七年政令第四十七号)第十七条の規定に基づき、厚生労働大臣が定める事業を次のように定める。
一 |
立木の伐採、造林、木炭又は薪を生産する事業その他の林業の事業であつて、常時労働者を使用するもの又は一年以内の期間において使用労働者延人員三百人以上のもの |
二 |
別表第一に掲げる危険又は有害な作業を主として行う事業であつて、常時労働者を使用するもの(前号及び次号に掲げる事業を除く。) |
三 |
総トン数五トン以上の漁船による水産動植物の採捕の事業(河川、湖沼又は別表第二に掲げる水面において主として操業する事業を除く。) |
別表第一
一 毒劇薬、毒劇物又はこれらに準ずる毒劇性料品の取扱い
二 危険又は有害なガスの取扱い
三 重量物の取扱い等の重激な作業
四 病原体によつて汚染されるおそれが著しい作業
五 機械の使用によつて、身体に著しい振動を与える作業
六 危険又は有害なガス、蒸気又は粉じんの発散を伴う作業
七 獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における作業
八 強烈な騒音を発する場所における作業
九 著しく暑熱な場所における作業
十 著しく寒冷な場所における作業
十一 異常気圧下における作業
別表第二
項 |
水面名 |
水面の範囲 |
一 |
陸奥湾 |
青森県高野崎から同県焼山崎に至る直線及び陸岸によつて囲まれた水面 |
二 |
富山湾 |
富山県生地鼻から石川県大泊鼻に至る直線及び陸岸によつて囲まれた水面 |
三 |
若狭湾 |
京都府経ケ岬から同府毛島北端に至る直線、京都府毛島北端から福井県鋸崎に至る直線、福井県鋸崎から同県特牛崎に至る直線及び福井県特牛崎から同県越前岬に至る直線並びに陸岸によつて囲まれた水面 |
四 |
東京湾 |
千葉県洲崎から神奈川県剣崎に至る直線及び陸岸によつて囲まれた水面 |
五 |
伊勢湾 |
愛知県伊良湖岬から三重県相生山に至る直線及び陸岸によつて囲まれた水面 |
六 |
大阪湾 |
和歌山県田倉崎から兵庫県生石鼻に至る直線及び兵庫県松帆崎から同県唐崎鼻に至る直線並びに陸岸によつて囲まれた水面 |
七 |
有明海及び八代海 |
長崎県瀬詰崎から熊本県天神山に至る直線、熊本県台場ノ鼻から鹿児島県長島町大崎に至る直線及び鹿児島県神崎から同県鵜瀬鼻に至る直線並びに陸岸によつて囲まれた水面 |
八 |
大村湾 |
長崎県高後崎から同県寄船崎に至る直線及び陸岸によつて囲まれた水面 |
九 |
鹿児島湾 |
鹿児島県立目崎から同県開聞岬に至る直線及び陸岸によつて囲まれた水面 |
|
労働保険への加入義務(雇用保険法)
一定の農業・水産業の事業者を除くすべての事業者は、雇用保険に加入する義務があります。
雇用保険は、一定の要件を満たす労働者に適用されます。
1.雇用保険が適用される事業
雇用保険が適用される事業は、労働者を雇用する事業とされています。(雇用保険法第5条)
なお、国、都道府県、市町村等の事業や一定の農林水産業の事業は暫定任意適用事業として雇用保険が強制適用とはならないこととされています。(雇用保険法附則第2条、雇用保険法施行令附則第2条)
2.雇用保険暫定任意適用事業
雇用保険が強制適用とならない事業は、以下の事業とされています。(雇用保険法附則第2条)
雇用保険暫定任意適用となる事業 |
(雇用保険法附則第2条)
次の各号に掲げる事業(国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業及び法人である事業主の事業(事務所に限る。)を除く。)であつて、政令で定めるものは、当分の間、第五条第一項の規定にかかわらず、任意適用事業とする。
一 |
土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業 |
二 |
動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他畜産、養蚕又は水産の事業(船員が雇用される事業を除く。) |
(雇用保険法施行令附則第2条)
法附則第二条第一項の政令で定める事業は、同項各号に掲げる事業のうち、常時五人以上の労働者を雇用する事業以外の事業(国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業及び法人である事業主の事業を除く。)とする。 |
3.雇用保険が適用される労働者
雇用保険が適用される労働者は、適用事業に雇用される労働者であつて、一定の者以外の労働者とされています。(雇用保険法第4条第1項、第6条)
2以上の事業に雇用される労働者については、次項のマルチジョブホルダー制度に該当する労働者を除き、主たる事業について判断することとされています。
雇用保険の適用を除外される労働者(雇用保険法第6条各号) |
一 |
一週間の所定労働時間が二十時間未満である者(マルチ高年齢被保険者となることの申出をして2つの事業所での週所定労働時間を合計して20時間以上となることでマルチ高年齢被保険者となる者及び法第四十三条第一項に規定する日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く。)
|
二 |
同一の事業主の適用事業に継続して三十一日以上雇用されることが見込まれない者(前二月の各月において十八日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者及びこの法律を適用することとした場合において法第四十二条に規定する日雇労働者であつて法第四十三条第一項各号のいずれかに該当するものに該当することとなる者を除く。)
※雇用保険法第42条
この節において日雇労働者とは、次の各号のいずれかに該当する労働者(前二月の各月において十八日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者及び同一の事業主の適用事業に継続して三十一日以上雇用された者(次条第二項の認可を受けた者を除く。)を除く。)をいう。
一 日々雇用される者
二 三十日以内の期間を定めて雇用される者
※雇用保険法第43条第1項各号
ⅰ |
特別区若しくは公共職業安定所の所在する市町村の区域(厚生労働大臣が指定する区域を除く。)又はこれらに隣接する市町村の全部又は一部の区域であつて、厚生労働大臣が指定するもの(以下この項において「適用区域」という。)に居住し、適用事業に雇用される者 |
ⅱ |
適用区域外の地域に居住し、適用区域内にある適用事業に雇用される者 |
ⅲ |
適用区域外の地域に居住し、適用区域外の地域にある適用事業であつて、日雇労働の労働市場の状況その他の事情に基づいて厚生労働大臣が指定したものに雇用される者 |
ⅳ |
前三号に掲げる者のほか、厚生労働省令で定めるところにより公共職業安定所長の認可を受けた者 |
|
三 |
季節的に雇用される者であつて、次のいずれかに該当するもの
ⅰ 四箇月以内の期間を定めて雇用される者
ⅱ 一週間の所定労働時間が二十時間以上であつて厚生労働大臣の定める時間数未満である者 |
四 |
学校教育法第一条、第百二十四条又は第百三十四条第一項の学校の学生又は生徒であつて、前三号に掲げる者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者
※雇用保険法施行規則第3条の2
法第六条第四号に規定する厚生労働省令で定める者は、次の各号に掲げる者以外の者とする。 |
一 |
卒業を予定している者であつて、適用事業に雇用され、卒業した後も引き続き当該事業に雇用されることとなつているもの |
二 |
休学中の者 |
三 |
定時制の課程に在学する者 |
四 |
前三号に準ずる者として職業安定局長が定めるもの |
雇用保険業務取扱要領
第 3 被保険者
1 被保険者の範囲
20303(3)被保険者とならない者
ニ |
学校教育法(昭和 22 年法律第 26 号)第 1 条に規定する学校、同法第 124 条に規定する専修学校又は同法第 134 条第 1 項に規定する各種学校の学生又は生徒(法第 6 条第 4 号)
学校教育法(昭和 26 年法律第 26 号)第 1 条に規定する学校、同法第 124 条に規定する専修学校又は同法第 134 条第 1 項に規定する各種学校の学生又は生徒(法第
6 条第 4 号)であっても、大学の夜間学部及び高等学校の夜間等の定時制の課程の者等以外のもの(以下「昼間学生」という)は、被保険者とはならない。また、昼間学生が夜間等において就労しても被保険者とはならない。
ただし、昼間学生であっても、次に掲げる者は、被保険者となる。
(イ) |
卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き当該事業に勤務する
予定のもの |
(ロ) |
休学中の者(この場合は、その事実を証明する文書の提出を求める。) |
(ハ) |
事業主との雇用関係を存続した上で、事業主の命により又は事業主の承認を受け、大学院等に
在学する者(社会人大学院生など) |
(ニ) |
その他一定の出席日数を課程終了の要件としない学校に在学する者であって、当該事業におい
て同種の業務に従事する他の労働者と同様に勤務し得ると認められるもの(この場合は、その事
実を証明する文書の提出を求める。) |
|
|
五 |
船員法第一条に規定する船員(船員職業安定法第九十二条第一項の規定により船員法第二条第二項に規定する予備船員とみなされる者及び船員の雇用の促進に関する特別措置法第十四条第一項の規定により船員法第二条第二項に規定する予備船員とみなされる者を含む。以下「船員」という。)であつて、漁船(政令で定めるものに限る。)に乗り組むため雇用される者(一年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く。) |
六 |
国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの |
4.雇用保険マルチジョブホルダー制度
雇用保険制度は、主たる事業所での労働条件が1週間の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用継続が見込まれる労働者に適用されますが、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して一定の要件を満たす場合に、マルチ高年齢被保険者となることの申出を、住所を管轄するハローワークに行うことで、雇用保険被保険者となることができる制度です。(雇用保険法第37条の5)
なお、この制度の適用対象は、令和6年1月時点では65歳以上の労働者に限られています。
マルチ高年齢被保険者となれる要件(雇用保険法第37条の5第1項) |
一 |
二以上の事業主の適用事業に雇用される六十五歳以上の者であること。 |
ニ |
一の事業主の適用事業における一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。 |
三 |
二の事業主の適用事業(申出を行う労働者の一の事業主の適用事業における一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間数以上であるものに限る。)における一週間の所定労働時間の合計が二十時間以上であること。
※雇用保険施行規則第65条の7 法第三十七条の五第一項第三号の厚生労働省令で定める時間数は、五時間とする。 |
外国人を雇用したときの届出義務(労働施策総合推進法)
事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合、雇用する外国人が離職した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その者の氏名、在留資格、在留期間その他厚生労働省令で定める事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならないとされています。(労働施策総合推進法第28条第1項)
届出時期は、雇用保険被保険者となる場合は入職日の属する月の翌月10日までに、被保険者とならない場合は入職日の属する月の翌月末までとされています。(同法施行規則第12条)
なお、外国人のうち、一定の者は届け出の対象から除外されています。(同法第7条、同法施行規則第1条の2第1項)
外国人を雇い入れたときの届出事項(労働施策総合推進法施行規則第10条第1項各号) |
一 |
生年月日 |
二 |
性別 |
三 |
国籍の属する国又は出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロに規定する地域 |
四 |
出入国管理及び難民認定法第十九条第二項前段の許可(以下「資格外活動の許可」という。)を受けている者にあつては、当該許可を受けていること。 |
五 |
出入国管理及び難民認定法第十九条の三に規定する中長期在留者(次条において「中長期在留者」という。)にあつては、同法第十九条の四第一項第五号の在留カードの番号 |
六 |
出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能(次条第三項において「特定技能」という。)の在留資格をもつて在留する者にあつては、法務大臣が当該外国人について指定する特定産業分野(同表の特定技能の項の下欄第一号に規定する特定産業分野をいう。) |
七 |
出入国管理及び難民認定法別表第一の五の表の特定活動(次条第四項において「特定活動」という。)の在留資格をもつて在留する者にあつては、法務大臣が当該外国人について特に指定する活動 |
九 |
雇入れ又は離職に係る事業所の名称及び所在地 |
十 |
賃金その他の雇用状況に関する事項 |
届け出対象の外国人の範囲から除かれる者(労働施策総合推進法施行規則第1条の2第1項) |
一 |
出入国管理及び難民認定法別表第一の一の表の外交又は公用の在留資格をもつて在留する者 |
ニ |
日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める特別永住者 |
募集及び採用についての理由の提示(高年齢者雇用安定法)
事業主は、労働者の募集及び採用をする場合において、やむを得ない理由により一定の年齢(六十五歳以下のものに限る。)を下回ることを条件とするときは、求職者に対し、厚生労働省令で定める方法により、当該理由を示さなければならないとされています。(高年齢者雇用安定法第20条第1項)
また、厚生労働大臣は、前項に規定する理由の提示の有無又は当該理由の内容に関して必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができるとされています。(同法第20条第2項)
やむを得ない理由により一定の年齢を下回ることを条件とするときの理由を示す方法(高年齢者雇用安定法施行規則第6条の6) |
1 |
労働者の募集及び採用の用に供する書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)に併せて記載又は記録する方法(同法施行規則第6条の6第1項) |
2 |
公共職業安定所又は職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、若しくは届出をして、職業紹介を行う者に事業主が求人を申し込む場合における当該求人の申込みの内容を記載し、又は記録したもの(同法施行規則第6条の6第2項第1号) |
3 |
職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、事業主がその被用者以外のものに委託して労働者の募集を行う場合における当該委託に係る募集の内容を記載し、又は記録したもの(同法施行規則第6条の6第2項第2号) |
4 |
職業安定法第四十五条の規定により労働者供給事業を行うものから事業主が労働者供給を受けようとする場合における供給される労働者が従事すべき業務の内容等を当該労働者供給事業者に対して明らかにしたもの(同法施行規則第6条の6第2項第3号) |
新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告その他これに類する方法により労働者の募集及び採用を行う場合又は書面若しくは電磁的記録がない場合において、あらかじめ上記の方法により理由を提示することが困難なときに、求職者の求めに応じて、遅滞なく理由を示すことができる方法。(同法施行規則第6条の6第3項) |
5 |
書面交付の方法(同法施行規則第6条の6第3項第1号) |
6 |
電子情報処理組織(事業主の使用に係る電子計算機と、求職者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、求職者が当該方法により記録された電磁的記録を出力することによる書面を作成することができるもの(同法施行規則第6条の6第3項第2号) |
性別を理由とする差別の禁止(男女雇用機会均等法)
労働者の募集及び採用をする場合、その性別にかかわりなく均等な機会を与える必要があります。(男女雇用機会均等法第5条)
また、労働者の配置などについても、性別を理由とする差別的取り扱いが禁止されています。(同法第6条)
1.募集・採用における差別の禁止
事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならないとされています。(同法第5条)
同法により禁止される差別的な取り扱いは、同法に基づく指針である「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」に例示されています。
なお、指針に示されている例はあくまでも例示であり、実際に法違反となるかどうかは個々の事情や類似裁判例などを勘案して、最終的には裁判所で司法判断されることになります。
判断の参考となる資料としては、厚生労働省からは指針および、同法施行通達が発出されており、これらに反する取り扱いであると認められる場合は行政指導の対象となる場合がありますが、法違反となるか否かは、最終的には司法判断となります。
募集・採用において禁止される取り扱いの例(指針、同法施行通達) |
イ |
募集又は採用に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること。 |
(排除していると認められる例)
① |
一定の職種(いわゆる「総合職」、「一般職」等を含む。)や一定の雇用形態(いわゆる「正社員」、「パートタイム労働者」等を含む。)について、募集又は採用の対象を男女のいずれかのみとすること。 |
② |
募集又は採用に当たって、男女のいずれかを表す職種の名称を用い(対象を男女のいずれかのみとしないことが明らかである場合を除く。)、又は「男性歓迎」、「女性向きの職種」等の表示を行うこと。 |
③ |
男女をともに募集の対象としているにもかかわらず、応募の受付や採用の対象を男女のいずれかのみとすること。 |
④ |
派遣元事業主が、一定の職種について派遣労働者になろうとする者を登録させるに当たって、その対象を男女のいずれかのみとすること。 |
※ |
「職種の名称」とは、男性を表すものとしては、例えば、ウェイター、営業マン、カメラマン、ベルボーイ、潜水夫等「マン」、「ボーイ」、「夫」等男性を表す語が職種の名称の一部に含まれているものがこれに当たるものであり、女性を表すものとしては、ウェイトレス、セールスレディ等「レディ」、「ガール」、「婦」等女性を表す語が職種の名称の一部に含まれているものがこれに当たるものであること。
「対象を男女のいずれかのみとしないことが明らかである場合」とは、例えば、「カメラマン(男女)募集」とする等男性を表す職種の名称に括弧書きで「男女」と付け加える方法や、「ウェイター・ウェイトレス募集」のように男性を表す職種の名称と女性を表す職種の名称を並立させる方法が考えられること。
「『男性歓迎』、『女性向きの職種』等の表示」の「等」には、「男性優先」、「主として男性」、「女性歓迎」、「貴女を歓迎」等が含まれるものであること。(同法施行通達) |
|
ロ |
募集又は採用に当たっての条件を男女で異なるものとすること。 |
(異なるものとしていると認められる例)
募集又は採用に当たって、女性についてのみ、未婚者であること、子を有していないこと、自宅から通勤すること等を条件とし、又はこれらの条件を満たす者を優先すること。 |
※「自宅から通勤すること等」の「等」には、「容姿端麗」、「語学堪能」等が含まれるものであること。(同法施行通達) |
|
ハ |
採用選考において、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。 |
(異なる取扱いをしていると認められる例)
① |
募集又は採用に当たって実施する筆記試験や面接試験の合格基準を男女で異なるものとすること。 |
② |
男女で異なる採用試験を実施すること。 |
③ |
男女のいずれかについてのみ、採用試験を実施すること。 |
④ |
採用面接に際して、結婚の予定の有無、子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無等一定の事項について女性に対してのみ質問すること。 |
※ |
「結婚の予定の有無」、「子供が生まれた場合の継続就労の希 望の有無」については、男女双方に質問した場合には、法には違反しないものであるが、もとより、応募者の適正・能力を基準とした公正な採用選考を実施するという観点からは、募集・採用に当たってこのような質問をすること自体望ましくないものであること。(同法施行通達) |
|
ニ |
募集又は採用に当たって男女のいずれかを優先すること。 |
(男女のいずれかを優先していると認められる例)
① |
採用選考に当たって、採用の基準を満たす者の中から男女のいずれかを優先して採用すること。 |
② |
男女別の採用予定人数を設定し、これを明示して、募集すること。又は、設定した人数に従って採用すること。 |
③ |
男女のいずれかについて採用する最低の人数を設定して募集すること。 |
④ |
男性の選考を終了した後で女性を選考すること。 |
|
ホ |
求人の内容の説明等募集又は採用に係る情報の提供について、男女で異なる取扱いをすること。 |
(異なる取扱いをしていると認められる例)
① |
会社の概要等に関する資料を送付する対象を男女のいずれかのみとし、又は資料の内容、送付時期等を男女で異なるものとすること。 |
② |
求人の内容等に関する説明会を実施するに当たって、その対象を男女のいずれかのみとし、又は説明会を実施する時期を男女で異なるものとすること。 |
※ |
「募集又は採用に係る情報」とは、求人の内容の説明のほか、労働者を募集又は採用する目的で提供される会社の概要等に関する資料等が含まれること。
なお、ホは男性又は女性が資料の送付や説明会への出席を希望した場合に、事業主がその希望のすべてに対応することを求める趣旨ではなく、先着順に、又は一定の専攻分野を対象として資料を送付する等一定の基準により一定の範囲の者を対象として資料送付又は説明会の開催を行うことは含まれないこと。
①については、内容が異なる複数の資料を提供する場合には、それぞれの資料について、資料を送付する対象を男女いずれかのみとしないこと等が求められるものであること。
②については、複数の説明会を開催するときは、個々の説明会についてその対象を男女いずれかのみとしないことが求められるものであって、男女別の会社説明会の開催は②に該当するものであること。(同法施行通達) |
|
出所:
「
労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(厚生労働省)」
「
改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について(厚生労働省)」
2.雇用管理の各場面における差別的取り扱いの禁止
事業主は、労働者の配置、昇進、降格等の各場面において、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならないとされています。(同法第6条)
差別的取り扱いが禁止されるのは以下の事項です。
差別的取り扱いが禁止される事項(同法第6条各号) |
1 |
労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練 |
2 |
住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
※厚生労働省令で定める福利厚生の措置(同法施行規則第1条各号) |
① |
生活資金、教育資金その他労働者の福祉の増進のために行われる資金の貸付け |
② |
労働者の福祉の増進のために定期的に行われる金銭の給付 |
③ |
労働者の資産形成のために行われる金銭の給付 |
④ |
住宅の貸与 |
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3 |
労働者の職種及び雇用形態の変更 |
4 |
退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新 |
また、同法により禁止される差別的取り扱いは、指針及び同法施行通達において例示されています。
なお、指針に示されている例はあくまでも例示であり、実際に法違反となるかどうかは個々の事情や類似裁判例などを勘案して、最終的には裁判所で司法判断されることになります。
判断の参考となる資料としては、厚生労働省からは指針および、同法施行通達が発出されており、これらに反する取り扱いであると認められる場合は行政指導の対象となる場合がありますが、法違反となるか否かは、最終的には司法判断となります。
雇用管理の各場面において禁止される取り扱いの例(指針、同法施行通達) |
イ |
一定の職務への配置に当たって、その対象から男女のいずれかを排除する
こと。
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(排除していると認められる例)
① |
営業の職務、秘書の職務、企画立案業務を内容とする職務、定型的な事務処理業務を内容とする職務、海外で勤務する職務等一定の職務への配置に当たって、その対象を男女のいずれかのみとすること。 |
② |
時間外労働や深夜業の多い職務への配置に当たって、その対象を男性労働者のみとすること。 |
③ |
派遣元事業主が、一定の労働者派遣契約に基づく労働者派遣について、その対象を男女のいずれかのみとすること。 |
④ |
一定の職務への配置の資格についての試験について、その受験資格を男女のいずれかに対してのみ与えること。 |
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ロ |
一定の職務への配置に当たっての条件を男女で異なるものとすること。 |
(異なるものとしていると認められる例)
① |
女性労働者についてのみ、婚姻したこと、一定の年齢に達したこと又は子を有していることを理由として、企画立案業務を内容とする職務への配置の対象から排除すること。 |
② |
男性労働者については、一定数の支店の勤務を経た場合に本社の経営企画部門に配置するが、女性労働者については、当該一定数を上回る数の支店の勤務を経なければ配置しないこと。 |
③ |
一定の職務への配置に当たって、女性労働者についてのみ、一定の国家資格の取得や研修の実績を条件とすること。 |
④ |
営業部門について、男性労働者については全員配置の対象とするが、女性労働者については希望者のみを配置の対象とすること。 |
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ハ |
一定の職務への配置に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。 |
(異なる取扱いをしていると認められる例)
① |
一定の職務への配置に当たり、人事考課を考慮する場合において、男性労働者は平均的な評価がなされている場合にはその対象とするが、女性労働者は特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。 |
② |
一定の職務への配置の資格についての試験の合格基準を、男女で異なるものとすること。 |
③ |
一定の職務への配置の資格についての試験の受験を男女のいずれかに対してのみ奨励すること。 |
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ニ |
一定の職務への配置に当たって、男女のいずれかを優先すること。 |
(優先していると認められる例)
営業部門への配置の基準を満たす労働者が複数いる場合に、男性労働者を優先して配置すること。 |
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ホ |
ホ 配置における業務の配分に当たって、男女で異なる取扱いをすること。 |
(異なる取扱いをしていると認められる例)
① |
営業部門において、男性労働者には外勤業務に従事させるが、女性労働者については当該業務から排除し、内勤業務のみに従事させること。 |
② |
男性労働者には通常の業務のみに従事させるが、女性労働者については通常の業務に加え、会議の庶務、お茶くみ、そうじ当番等の雑務を行わせること。 |
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へ |
へ 配置における権限の付与に当たって、男女で異なる取扱いをすること。 |
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(異なる取扱いをしていると認められる例)
① |
男性労働者には一定金額まで自己の責任で買い付けできる権限を与えるが、女性労働者には当該金額よりも低い金額までの権限しか与えないこと。 |
② |
営業部門において、男性労働者には新規に顧客の開拓や商品の提案をする権限を与えるが、女性労働者にはこれらの権限を与えず、既存の顧客や商品の販売をする権限しか与えないこと。 |
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ト |
配置転換に当たって、男女で異なる取扱いをすること |
(異なる取扱いをしていると認められる例)
① |
経営の合理化に際し、女性労働者についてのみ出向の対象とすること。 |
② |
一定の年齢以上の女性労働者のみを出向の対象とすること。 |
③ |
女性労働者についてのみ、婚姻又は子を有していることを理由として、通勤が不便な事業場に配置転換すること。 |
④ |
工場を閉鎖する場合において、男性労働者については近隣の工場に配置するが、女性労働者については通勤が不便な遠隔地の工場に配置すること。 |
⑤ |
男性労働者については、複数の部門に配置するが、女性労働者については当初に配置した部門から他部門に配置転換しないこと。 |
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最終更新:R6年5月6日